個人事業主の税金開業お役立ち講座

このブログでは現役の税理士である著者が実際にいただいた相談事項をもとにして税金に関する事柄を解説しています。読者登録していただくと泣いて喜びます(ToT)

個人事業主が開業して困りやすい固定資産の取扱いについて

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独立開業したら色々と備品にもお金がかかるなぁ。 これらはすべて経費にするとかなりの赤字になりそうだけれど、これで会計的に合っているのかな? 固定資産や減価償却なんて言葉を聞いたことはあるんだけれど…。

独立開業すると特にスタートアップでは経費にお金がかかりますよね。 特に事務所や店舗をかまえる場合には工事の金額も大きくなる事でしょう。

当ブログでは、税理士が事業を営む自営業の方からいただいたご相談などを事例ごとにご案内をしています。

今回は開業して固定資産となる経費の取扱いについての疑問をいただいた事例についてご紹介していきます。

開業した個人事業主が経費で多い誤解

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固定資産は一度に経費にできる?

結論から申し上げますと一度に経費にできる固定資産は金額で決まります。 そもそも固定資産とは何でしょうか?

会計上の固定資産とは、販売目的でなくかつ継続的に会社で使用することを目的とする財産のことを指す。

wikipediaより一部引用

このように定義されています。平たく言えば、売り買いするような棚卸資産でもなく、一瞬で使用して終わるような消耗品でもないものです。 開業時の具体的な固定資産の代表的なものを挙げてみましょう。

  • 建物(賃貸でなく購入したもの)
  • 建物附属設備(電気工事や水道工事)
  • 機械(製造業などの専門的な機械)
  • 器具備品(パソコンや机)
  • 車両運搬具(自動車)
  • ソフトウェア(ホームページなども無形の固定資産に分類されています)

このように購入した固定資産があるのであれば、原則として一度に経費にはならず減価償却費として経費になっていきます。

ここで注意いただきたいのが、自身の事業計画を考える場合。 個人事業主一年目ですと、減価償却の存在を知らないがために開業にかかった費用すべてを経費として考慮している場合も多いです。
200万円・300万円の固定資産をすべて経費にできると思っていたのに、いざ確定申告の時になって減価償却の方法に修正したら相当な黒字になってしまったという人も…。
計画を立てる時には、固定資産は減価償却して12等分(計算期間が12ヶ月の場合)で毎月概算の減価償却費を計上するようにすると良いです。

開業前に買った固定資産の扱いは?

開業前に購入したパソコンなどの器具備品の会計処理はどうするのでしょう? 結論から申し上げますと開業して使用しだした日から減価償却を行えば大丈夫です。

税務会計上、固定資産は単に購入した日から減価償却が始まるのではなく、実際に使用を開始した日から減価償却を行うのです。

パソコンを事前に購入して使い出していたのであれば、仕方ないので事業年度開始日を使用日として減価償却を行うのがベターです。

値段が高いとすべて固定資産になる?

最初の項の「固定資産は一度に経費にできる?」というところで申し上げましたが、固定資産であっても金額により特例の処理が認められています。

  • 10万円未満…少額の減価償却資産として一度に経費に計上してもよい
  • 20万円未満…「一括償却資産」として3年間で償却を行ってもよい
  • 30万円未満…青色申告している特典。30万円未満であれば一度に経費に計上してもよい(年間300万円限度)

以上のように特例として認められています。 特例というように、原則はそれぞれの耐用年数に従って減価償却します。

同じ20万円のパソコンでも下記のようになります。

  • 原則…耐用年数4年で償却。1年目は5万円しか経費にならない。
  • 特例…青色申告なので特例を使って経費計上。1年目で20万円すべて経費になる。

開業した年は黒字にするのも難しい事も多いです。無理に特例を使用して経費にしなくても良いという事は覚えておいてください。  

開業しても固定資産を経費にするのに多い悩み

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固定資産の減価償却する定額法・定率法って何?

固定資産の減価償却はいくつか方法がありますが、その中でもメジャーなのが定率法と定額法です。 そもそもとして税務署に何も届出をしないとデフォルトの減価償却方法が決まっています。

  • 個人…定額法
  • 法人…定率法

このようにあなたが個人事業主か法人で事業をしているかで償却方法も異なるのです。 ただし、固定資産の種類によっても償却方法は限られます。現在で言えば建物と建物付属設備は定額法しか使えません。 それぞれの償却方法の特徴です。

  • 定額法…常に減価償却費が一定(同額)なので事業計画などを練りやすい
  • 定率法…始めに償却額が大きくなるので経費にする金額が大きくなる

このような経費処理の性格から、特に節税として購入されるような備品や車両は定率法で早めに減価償却した方が有利になります。開業した年であれば確定申告書の提出期限までに減価償却の方法は変更できます。

個人用:[手続名]所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続 法人用:[手続名]減価償却資産の償却方法の届出

一度償却方法を決めても、何度でも償却方法は変更できます。 2年目以降は事業年度開始前までに税務署への届出が必要になります。

耐用年数ってどうやって分かるの?

いきなり固定資産の耐用年数で減価償却をしてと言われても分かりませんよね? そこで、国税庁の方からもそれぞれの固定資産の耐用年数はこうしなさいという耐用年数表が出ています。

国税庁:耐用年数表

こちらに従ってそれぞれの固定資産を減価償却していただければと思います。 耐用年数表は昔からの運用のため言葉の言い回しがかなり古臭い(たとえばパソコンだと「電子計算機」とか)のはご了承ください。

逆にこのような耐用年数表があるのにかなり短い期間で減価償却(たとえば建物を2年で償却とか)を行ってしまうと修正申告となる可能性があります。 税法は法律なので守らないと是正されるのは仕方ありません。  

開業した個人事業主の方へのエール

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会計ソフトをうまく利用する

固定資産の減価償却って面倒くさいなと思われたでしょうか? 経理を行うための会計ソフトを導入すれば固定資産の機能も始めから付いています。 たとえばクラウド会計の「会計freee」「MFクラウド」「弥生会計オンライン」といったところはユーザーも多いのでネットで検索しても色々なヘルプがすぐに見つかります。

これらはすべて無料期間があるので一度お試しされてはいかがでしょうか?

時間の削減を求めるなら税理士を利用してしまう

ここまで開業してからの固定資産の経費について記述してきました。 これから自分で経理ができそうでしょうか?

もしあなたが経理の時間を削減したいとか、経営においてのアドバイスや相談をしたいというのであれば税理士と契約するのをおすすめします。 税理士というと敷居が高いかもしれませんが、最近はかなり相談もしやすくなっています。

また、顧問契約だけでなく単発で相談できる税理士も増えてきました。 税理士との契約は料金も重要ですが、何だかんだで一番重要視するのは「その税理士と話が合いそうか?」というところだと思います。

開業してからの固定資産などの経費処理が無事に終わるとともに、今後のあなたの事業の成功を願っております。  

以上がお伝えしたかった「開業して固定資産となる経費の取扱いについて」についての内容となります。 本稿が少しでもあなたのお役に立てましたら幸いです。